離宮にて〜地獄への扉〜




本棚の奥へと腕を突っ込んで、手探りで探り当てたレバーを引くと、音もなくその横の壁が口を開ける。
ジェレミアがいるとは知らないルルーシュは、その秘密の部屋の中に入り、さらにその奥のある小さな扉を開けた。
扉の向こうの通路は、まるで地獄にでも通じているかのように暗い闇に包まれていた。
ルルーシュは用意しておいた手燭に灯りを点し、その通路を下っていく。
そこは離宮と王宮を結ぶ秘密の通路で、ルルーシュの父である前の皇帝が密かに造らせたものだった。
そこを知っているのはルルーシュと妹のナナリーと父と母だけである。
通路をしばらく下ってルルーシュは一度だけ後ろを振り返り、そして何かを振り切るように向き返り、再び通路を歩き出した。
そして、手に握られた小さなスイッチをぎゅっと握り締めて、躊躇いもなくボタンにかけた指に力を入れる。
通路の後方。今ルルーシュが歩いて来た方向から、ズンと鈍い音が聞こえて地響きが鳴った。
しばらく鳴り止まない地響きを気にすることなく、ルルーシュは歩き続けて、通路の奥の闇の中へと姿を消した。





翌朝、王宮は一夜にして崩壊した離宮の話題でもちきりだった。
予め立ち入り禁止の命がルルーシュより出されていたので、死傷者はいないはずである。
目を覚ましたルルーシュは、昨日の苛立ちは何処へやら。スッキリと爽やかな朝を迎えることができた。
スザクが朝の「おはよう」を言いに来ても、C.C.が暇をもてあまして遊びに来ても、ロイドが昨日の愚痴を言いに来ても、ルルーシュは晴れやかな笑顔でそれに応対した。
それらを聞きながら、ルルーシュは何かが足りないことに気づく。

「・・・そう言えば、ジェレミアの姿が見えないようだが?」

毎朝いの一番にルルーシュに挨拶に顔を出し、暇を見つけては保護者のようにルルーシュに纏わりついて離れない、ジェレミアの顔を今日はまだ見ていない。
首を傾げているルルーシュに「そう言えば」とスザクが声をかける。

「昨日の夕方近くにルルーシュを探してたみたいだったけど・・・?」
「そ、そうか・・・?」
「会わなかった?」
「・・・いや」

そう言ってルルーシュは昨日まで窓から遠くに見えていた離宮の方へと視線を向ける。

―――・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、な・・・。





一方その頃。

・・・ル、ルルーシュ様は、私をどれだけいたぶれば気が済むのだぁぁぁ〜ッ!!」

瓦礫の中で一晩を明かしたジェレミアは吠えていた・・・。